木の辞典
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- 自然の木材には色々な種類があり、性質もまた様々です。古来人々は、それらの性質を上手に生かしながら様々な用途に用いてきました。現代でも、木を用いる時には、その用途と性質とを十分に検討しながら用います。ここでは、世界中のたくさんの木の中から、現在日本で流通している木を中心に紹介しています。
国産針葉樹
檜 (ヒノキ)
ヒノキ科ヒノキ属
学名:Chamaecyparis obtusa 英名:Hinoki cypress
杉(スギ)と並んで、日本を代表する針葉樹で、造林面積も杉に次いで多い木です。昔、火を起こすのに使われたことがヒノキ(火の木)の語源だという説がありますが、真偽はわかりません。
ヒノキというと見た目の美しさや香りの良さが語られがちですが、強度、耐久性、耐朽性、加工性に優れた、第一級の良材です。世界的に見ても、チークなどと並んで最も優れた建築用材の一つと言われます。欠点を挙げるとすれば、スギなどに比べて成長が遅いために太い木が取れにくいこと、そのためにどうしてもコストがかさむことです。
ヒノキは伐採後200年くらいまでは徐々に強度が上り、その後1000年くらいかけて、伐採時の強度に落ちてくるという材料です。こんなことが分かるのも、ヒノキが古くから神社仏閣などに使われていて、経年変化のデータが取れるためです。
用途
ヒノキは構造的に優れているだけでなく、水やカビ、腐りに対しても強い上に、加工がし易いという、バランスの取れた良材です。そのため構造材、造作材、建具、風呂桶、家具、生活用品など、幅広く用いられてきました。特に神社仏閣にはかかすことのできない材料で、伊勢神宮の御料木などは特に有名です。
杉 (スギ)
スギ科スギ属
学名:Cryptomeria japonica 英名:Japanese cedar
日本を代表する針葉樹です。様々な用途に使えて、成長も早いことから大量に植林され、現在では日本の造林の40パーセントくらいが、スギの林と言われます。春の杉花粉は、日本の風物詩です。
スギは、「まっ直ぐ伸びる→直ぐ木→すぎ」になったといわれるように、真っ直ぐ高く伸びる木です。非常に古くから日本に生えていて、建築材料としても昔から利用されてきました。
材木業界では、太平洋側のスギをオモテスギ、日本海側のスギを裏スギと呼び、区別してきました。日本海側に多いウラスギは、アシウスギ:Cryptomeria japonica var.radicansという、スギ:Cryptomeria japonicaの変種で、オモテスギより葉の角度が狭いことが特徴です。秋田杉や北山杉などがウラスギにあたります。
「Nipponia nippon:ニッポニア ニッポン」が「トキ」の学名である事は有名ですが、日本を代表する木であるスギの学名は「Cryptomeria japonica(クリプトメリア ヤポニカ)」。これは、「隠れた日本の宝」とも訳せるらしいです。ただ、属名のCryptomeriaは種子の形状に由来するもので、隠れた日本の宝と訳せるのは偶然です。
用途
スギは加工がしやすく、建具や羽目板などの建築造作材のほか、箸や下駄などの生活道具にも用いられてきました。また、スギの皮は屋根を葺く材料にも使われるなど、幅広い用途に利用されました。中でも秋田スギに代表される天然のスギは、美しい木目をしており、数奇屋造りにはかかせない材料です。
スギは成長が早く、ストックも豊富なため、国産材の中では比較的安価な材料です。最近ではスギの間伐材や端材を利用した木製品や、断熱材、バイオマスなど、大量の資源を生かす、様々な試みがされています。しかし、木の性質としてはやわらかく、やや強度が劣るため、梁等の横架材(おうかざい)に用いるときには太めの材料を使います。また、ヒノキなどに比べ耐朽性も落ちるので、雨の当たる部位に用いる時には注意が必要です。
檜葉(ヒバ)
ヒノキ科アスナロ属 別名:ヒノキアスナロ,アオモリヒバ
学名:Thujopsis dolabrata var.hondai
名前(檜葉)のとおり、葉っぱの形が檜(ヒノキ)に良く似た木で、強度などの性質もヒノキに準じます。青森県の天然林が有名で、青森檜葉(ヒバ)は国産ヒバの7割以上を占めています。ただ流通量が少ないために高価で、ベイヒバと呼ばれる、ヒバに良く似た木が代用品として使われることが多いです。
「明日檜になろう」という名でで有名な、アスナロ(翌檜):Thujopsis dolabrataという木があります。その変種にヒノキアスナロ(var.hondai)という木があり、有名な青森ヒバなどはヒノキアスナロにあたります。ただ、地域によって地方名等があり複雑なので、ヒノキアスナロもアスナロも、まとめてヒバと呼ぶ事が多いようです。
ヒバにはヒノキチオールという成分が含まれます。ヒノキチオールは、防腐効果が非常に高く、またシロアリにも効果があります。ヒノキチオールという名前はタイヒに由来し、国産のヒノキにはほとんど含まれないそうです。国産でも、一部のヒノキには含まれることもあります。ただやはりその含有量は少いようです。(追記/2007/12/20)
用途
ヒバに含まれるヒノキチオールという成分は耐蟻牲、防腐性に優れていて、近年様々な用途に使われています。シロアリに強い事から、土台に非常に適しています。捩れや反りが起きやすいので、建具などに用いる時には注意が必要です。
椹(サワラ)
ヒノキ科ヒノキ属
学名:Chamaecyparis pisifera 英名:Sawara cypress
木目、樹形ともに、檜(ヒノキ)に良く似ています。球果の形が檜と違うので、そこで見分けるのが分かりやすいです。檜より小さく、窪みがあります。 サワラは水に強く、昔は便所などに使われたそうです。その記憶が残っていて、今でもご年配の方のなかには、サワラを嫌がられる方もいます。
用途
サワラは柔らかい木で構造には向きません。一方で水には強く、便所、桶、柄杓など、水周りの道具に多く使われてきました。木目が美しいことから、最近では天井板や腰板としても人気があります。柔らかい木なので、肌触りも良いです。
黒檜(クロベ)
ヒノキ科クロベ族 別名:鼠子(ネズコ)
学名:Thuja standishii 英名:Japanese arborvitae
鼠子(ネズコ)と呼ばれる事が多い、ヒノキ科の針葉樹。クロベの名は、今ではあまり知られていません。ですが、ヒノキやコウヤマキなどとともに、木曾五木の一つに数えられ、古くから珍重されてきた貴重な木材です。 クロベを製材すると、名前の通り少し灰色がかったようなくすんだ色目をしています。その灰色がかった色が、時と共に強くなり、神代杉(ジンダイスギ)に似た雰囲気の、渋い色合いに落ち着いていきます。 クロベに良く似た木に、ベイスギ(ウエスタン・レッド・シダー)がありますが、こちらは時を経るとともに黒ずんでいき、何年か後にはクロベとは違った色目になります。
用途
その独特の色合いと耐朽性を生かして、数奇屋門や欄間などに使われていました。柔らかくて加工はしやすいですが、構造材には不向きです。クロベは植林に向かないことから流通量も少なくなっています。
高野槙(コウヤマキ)
スギ科コウヤマキ属
学名:Sciadopitys verticillata 英名:Japanese umbrella pine
コウヤマキは独特の香りがすることで知られていて、昔から人気があります。木目はサワラ等に近いですが、ヤニの感じなど、どこかマツに近い雰囲気もあります。表面は光沢があり、水に強いです。
用途
水に強い事から、風呂桶の材料としてよく知られています。狂いも少なく造作材にも適しますが、希少な材料なのであまり使われる事はないです。
*マツ目コウヤマキ科コウヤマキ属とする分類法(クロンキストの体系等)もありますが、ここではマツ目スギ科コウヤマキ属としました。
犬槙(イヌマキ)
マキ科マキ属 別名:草槙(クサマキ)
学名:Podocarpus macrophyllus
草槙ともいいます。 庭木等にもよく植えられている木で、葉は高野槙によく似ています。
用途
高野槙と同じで水に強いため、昔は風呂桶等に使われていました。またシロアリにも強く、土木用に用いられる事もあったようです。
赤松(アカマツ)
マツ科マツ属 別名:女松
学名:Pinus densiflora 英名:Japanese red pine
松(マツ)には様々な種類がありますが、普段目にすることが多い松はアカマツかクロマツがほとんどです。アカマツを女松、クロマツを男松とも呼びます。木の皮が赤っぽく葉が柔らかい木がアカマツ、皮が黒っぽくて葉が硬い木がクロマツです。 マツは、川原などに災害防止のために植えられる事もあるように、崖や荒地などでも、根を伸ばしてしぶとく生えてくる木です。
とてもヤニの強い木で、松明(タイマツ)としても利用されました。ヤニの強さが木目にも現れています。松脂(マツヤニ)によく似た言葉に、脂松(ヤニマツ)という言葉もあります。脂松は、脂が強く独特の光沢のあるマツを指し、肥松(コエマツ)とも呼ばれ珍重されます。アカマツの林は松茸が取れる事でも知られていますが、マツクイムシの影響で近年減少しています。
用途
強度のある木で、曲げに対しては特に強いため、梁や差し鴨居などに用いられます。古い家では、曲がった木がそのまま小屋丸太として使ってあることがありますが、マツが使われていることが多いです。ただし、虫や腐りに弱い上に、曲がりやすいという欠点もあるので注意が必要となります。
黒松(クロマツ)
マツ科マツ属 別名:男松
学名:Pinus thunbergii 英名:Japanese black pine
クロマツはアカマツと違い塩に強いため、海岸の防風林としても植林されています。そのため、海岸沿いで見かけるマツはほとんどがクロマツになります。
製材してしまえばアカマツとの違いはなかなか分かりませんが、クロマツのほうが冬目が強く出てきます。
用途
アカマツよりもさらに強度があり、横架材や、鴨居などに使います。 しかし、耐朽性、耐蟻性ではアカマツよりも弱く、虫も入りやすいので注意が必要となります。
唐松(カラマツ)
マツ科カラマツ属 別名:落葉松
学名:Larix leptolepis
唐松(カラマツ)は、他のマツ(アカマツ)と比べ、木の形や葉の形が変っていて、一見するとなかなかマツの仲間には見えません。松なので針葉樹なのですが、冬になると葉の落ちる落葉針葉樹で、落葉松とも呼ばれます。
北海道には唐松の林が広がっていて、植林も進んでいます。また本州でも高地にいくと生えています。長野県や北海道のカラマツの林は、秋になると見事に紅葉し、観光名所にもなっています。
木目は、オレンジ色の夏目に赤っぽい冬目が入っていて特徴があります。 最近は、ロシアからのグイマツ(ホクヨウカラマツ)の輸入が増えています。
用途
構造材や造作材料として幅広く用いられる。特に、構造用合板の材料として有名。最近は、やや濃い色目やはっきりした木目好まれて、床材等に貼る事も多いです。
栂(ツガ)
マツ科ツガ属
学名:Tsuga sieboldi 英名:Southern japanese hemlock
柱や鴨居などに本栂(ホンツガ)を使用した建物は栂普請(ツガブシン)と呼ばれ、日本建築の中では高級な建物に位置付けられます。光沢もあり、美しい木目をしています。ツガは、樹皮はマツに近く、葉はモミやイチイなどに似ています。最近はカナダツガやベイツガと呼ばれる木材も流通していますが、樹種により性質や性能が異なります。
<用途
丈夫な材なので構造材に向いていますが、耐朽性では檜などに劣ります。堅牢な木で鴨居や敷居としても用いられてきました。ストックがあまりないこともあり、高級な材料となっています。
樅(モミ)
マツ科モミ属
学名:Abies firma 英名:Japanese fir
クリスマスツリーとして有名な木です。 日本の山に普通に生えている木の中ではかなり大きい部類で、40m近い木もめずらしくありません。 モミには、ウラジロモミ(Abies homolepis)と呼ばれる種もありますが、こちらのモミの方が、高く成長します。
用途
昔は、棺桶や卒塔婆(お墓に立てる木)の他、箱などの材料にも用いられていましたが、需要の減少と共に使われる事も減りました。
一位(イチイ)
イチイ科
学名:Taxus cuspidata
聖徳太子や百人一首の絵などで、よく手に持っている薄い木片の事を「しゃく」と呼ぶそうです。あのしゃくの材料となっているのが一位(イチイ)という木で、今でも神主さんが使っています。昔、位が正一位の人のしゃくを作ったことから「一位」という名前がついたとされています。
イチイの木目は、独特の赤味があり、光沢もあって美しい材です。また、成長が遅くて細かい葉節が入ることが多く、それもイチイの個性の一つとなっています。産地としては岐阜県大野郡が有名で、県の木にも指定されています。ただ、現在は減少しており、ほとんどの材は北海道産や輸入材です。
イチイの木は、モミに良く似ています。また、イチイの赤くて小さな実は甘くて美味しいのですが、中の種には毒性があります。注意しましょう。
用途
独特の色合いと木目を生かして、床の間などに用います。床柱にする時は、白太の部分を少し残して、エンジュと同じような使い方をします。堅い木ですが加工がしやすく、表面の仕上がりもよいので家具や彫り物の材料としては一級の良材とされます。中でも岐阜高山の一刀彫りは有名です。また、その優れた材質を生かして、世界中で弓の材料にもなってきました。